08.4 二次 Dominant は一時転調?

二次 Dominant は C Major Key の支配下にあるのか、仮トニックの調の支配下にあるのか?

前のページ (08.3) と その前のページ (08.2) を見て、おかしいと思いました? 筋が通っていないと思いました? 08.2 で Altered Tension は別にして「Tension 足り得るのは白鍵だけ」と言い切りました。何を意味しているかと言うと、二次 Dominant が鳴っている瞬間もその曲の Key は C Major なんですと言うことです。それなのに 08.3 では「仮 Tonic が Dm7 なら D minor Key の支配下」と言っています。つまり、二次 Dominant とその Connected II が鳴っている時は一時的に転調していると言うことです。これは明らかに矛盾です。

実は 08. で二次 Dominant について気になっていることがあると書いたのはこのことです。

二次 Dominant には 2つの説があります。

  1. 仮 Tonic の 5度上のコードが 7th に変化したもの。
  2. 一時転調

勝手に 7th に変化させるなと言われるかもしれませんが、芸大和声では、C minor Key の G7 は、B♭音をB音に半音高めて導音 (Leading Tone) とするとしています。つまり、B♭を B音に変化させています。「変化」自体がこじつけと言うわけではなさそうです。Attention please。芸大和声がこちらを支持しているとは言っていません。1. の説は、二次 Dominant が鳴っている時も Key はあくまでも C Major。

それに対する 2. の一時転調説ですが、芸大和声は、「主調の内部に現れる主調と異なる諸調をすべて内部調という」としています。曲の調は主調ですが、その中にちょいちょい現れる他の調を内部調としています。特に転調のように調号を書き換えることもせず、♯ と♭の臨時記号で表す程度の短い転調。つまりは一時転調です。芸大和声はこちらを支持しています。

どちらが正しいかやってみましょう。やり方ですが、二次 Dominant の Chord Tone を書き込みます。 Chord Tone は 4つなので、残りの 3つのスペースに 1. の説なら C Major Scale の音符を、2. の説なら一時転調の音符を書き込みます。それを比べます。加えて、Connected II のコードがどうなるか見てみます。

まず、参照用の C Major Scale です。

✔️ Bm7 (♭5) ⇨ E7 ⇨ Am7

A Harmonic minor Scale です。AHm でないと 7th が作れません。

次に E7 の Chord Tone を書き込み、空いているところを C Major Scale で埋めます。

今度は E7 の Chord Tone を書き込み、空いているところを CHm Scale で埋めます。

同じですね。と言うか同じに決まってますよね。 C Major と AHm は Leading Tone (G♯) 以外は構成音が同じなんですから。では Connected II はどうか? Connected II は B音をRoot にして、一つ飛ばしで音符を押さえます。すると、C Major & CHmとも Bm7 (♭5) ができます。と言うことは、どっちの説と言っていること自体意味を成しません。

✔️ Am7 ⇨ D7 ⇨ G7

端折ります。結果は上と同じです。

✔️ Gm7 ⇨ C7 ⇨ FM7

上と同じです。

✔️ F♯m7 (♭5) ⇨ B7 ⇨ Em7

上と同じです。

✔️ Em7・Em7 (♭5) ⇨ A7 ⇨ Dm7

これも同じでしょうか? まず C Major Scale ですがこれは白鍵だけなので五線譜は要らないですよね。次に D Harmonic minor Scale です。

A7 に C Major Scale 音を足します。

A7 に DHm Scale 音を足します。

違いますね。C Major Scale の B音が DHm だと B♭になります。なので、Connected II が C Major だと Em7 ですが、 DHm だと Em7 (♭5) になります。

どっちが正しいんでしょう? それ以前に正しいとか正しくないとかの話なんでしょうか?

実際の曲を当たって見ると、Major Key では Em7・Em7 (♭5) のどっちも出て来ます。私のいた学校は、Dm7 という minor Chord に進む二次 Dominant と Connected II は、Em7 (♭5) ⇨ A7 でした。 つまりは、一時転調派でした。では、実際に出てくる Em7 ⇨ A7 ⇨ Dm7 はどう説明するのか? 答えは Em7 は Connected II ではなく、 C Major Key の Diatonic Chord たる Em7。Em7 が二次 Dominant  としても 1. の説によれば、 Em7 の Chord Tone 以外は C Major Scale 音で埋められます。それでできる Scale は C Major Scale。

いろいろ考えると、一時転調の方に分があるような気がします。Em7 (♭5) ⇨ A7 ⇨ Dm7 は D minor Key の支配下。Em7 ⇨ A7 ⇨ Dm7 が存在するのは、Em7 が Connected II ではなく Diatonic Chord だから。一方、D minor ではなく C Major の支配下にいるという説は、Em7 (♭5) の (♭5) の説明がつかない。A7 の Chord Tone を五線譜に置いて、あと C Major Scale 音で埋めるんだから、♭5 の B♭音は絶対に出てこない。

どうでしょう。ということで、私は一時転調派です。「08.1 Major Key の二次 Dominant」は 1. の説に従い書きましたが、A7 以外は 1. でも 2. でも結果は同じ。唯一違う A7 ⇨ Dm7 については上で書いたので、特に 08.1 を書き換えることはしません。

 

A7 ⇨ Dm7 の前にくる Em7 と Em7(♭5)。どちらも使いますね。

This page originally written on 2021.02.21, revised on 2021.12.10

長年サラリーマンで現在プロ作曲家志望です。

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