Ex-81 「怪獣の花唄」のメロの跳躍

Vaundy さんの「怪獣の花唄」です。この曲で一番耳に残るサビ頭のメロ「騒げ怪獣の唄」がM7 (長7度) 跳躍していますが、果たしてこれが理論上是か否かというお題です。

https://www.youtube.com/watch?v=UM9XNpgrqVk

原曲 Key は D ですが、C に直します。

まずヘンテコな ”5” と言うコードの説明です。あんまり一般的ではないと思いますが便宜上使います。これパワーコードです。パワーコードはロック曲で良く使われるコードの 3rd を省いたコードです。C のコードを例に出すと、C は C・E・G音でできていますが 3rd の E を省いて C・G 音だけでできているコード。E音は普通省略できない音です。E音が鳴ったら C Major、E♭音が鳴ったら Cm になり、Major or minor を決める大切な音だからです。ただ、Major or minor 感なんて出したくないと言う曲もありパワーコードが使われます。

ロック曲でパワーコードが使われる大きな理由だと私は勝手に思っているのはギターの音の歪みです。「怪獣の花唄」も思いっきりギターを歪ませていますが、3rd を入れると不快な感じになります。C のコードの構成音の C (Root) と G (5th) は協和度が高いんですが、それに比べると C と E、E と G音はそれほどでもありません。このそれほどでもない協和度の E音が思いっきり歪んで鳴るのはちょっと聴くに耐えません。

青字は 3rd を入れるとこうなるだろうと言うコード。

Gsus4 を入れている理由ですが、メロに C音が入っているからです。G7 だと C音は Avoid Note になるので、sus4 にして C音をコードトーンにしています。

さて、本題の M7 の上行跳躍です。

このメロが新しいなと感じるのは、上の譜面の 2小節目で「の」から「う」に M7 上行跳躍しますが、さらに上行して「た」に進行しているところです。普通 M7 も跳躍したらそのあとは落ち着かせるために下がりますが、このメロは上がっています。

Norah Jones の 「Don’t Know Why」も歌の出だしでいきなり M7 上がりますが、その後は下がっています。 https://www.youtube.com/watch?v=tO4dxvguQDk

そもそも M7 の跳躍は許されているかと言えば、和声学では原則禁止です。「原則」と書いたのは例外もあるからです。Jazz ではどうでしょう? Mark Levine の 「The Jazz Theory」では M7 はおろか M9 の跳躍も出てくるので禁止云々以前にはなから問題にしていません。

和声学に戻って、和声学でこの M7 を説明できるかどうかですが、一応説明は可能です。

✔️ まず G5  と言うコードですが、3rd を入れて G7sus4 – G7 だと解釈します。譜面の 2小節目の「の」の C音をコードトーンにするための sus4 ですが、これは G7 の B音が C音に上方転位 (変化) したものと考えられます。元々のコードは G7。

✔️ 和声学は M7 の跳躍を認めていませんが、どちらかの音が転位音であればその転位音を原位音 (転位前の音) に戻した場合禁止されている跳躍でなければ良好となります。

✔️ 転位前の B音が次に Octave 上の B音に跳躍したと考えると、Octave 跳躍は良好なので 2小節目の M7 跳躍も良好という理屈が成り立ちます。

ただ、和声学から見たらそもそも 3rd は抜いてはいけない音なので 「3rd がない和音の説明なんかに和声学を使うな」と言う立場でしょうし、ロックをやっている方から見れば「和声学なんて知るか」と言いたくなるでしょう。

長年サラリーマンで現在プロ作曲家志望です。

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