17.3 半音上げ転調
「どうせ Pivot 転調から書くんだろ」と思っていた方。裏をかいてしまいました。半音上げ転調は勝手に作った言葉なので用語ではありません。何かと言うと、大サビに入るところで Key を半音上げる転調。よく聴きますよね。例を書くと、
- Misia の「 Everything」 の大サビ。D♭ ⇨ D Key https://www.youtube.com/watch?v=aHIR33pOUv0
- YOASOBI の「群青」の大サビ。B♭ ⇨ B Key https://www.youtube.com/watch?v=Y4nEEZwckuU
- YOASOBI の「もう少しだけ」の大サビ。E♭ ⇨ E Key https://www.youtube.com/watch?v=VfATdDI3604
半音上がって大サビに突入して大体上がったままで終わります。大サビの盛り上げ方の一つ。サビが丸ごと半音持ち上がって大サビになるのが特徴です。この転調は感覚的にすぐわかりますよね。なので最初に持ってきました。ただ、転調法 (転調の理論) だとここは素通りするのがほとんどだと思います。半音上げただけなので、理論で扱うほどのものではないと言うところでしょうか?
ではこれは転調前と後の関連がまったくなしに Key を半音上げているんでしょうか? そんなことはないと私は思っています。
YOASOBI の「もう少しだけ」を例にします。この曲は転調前が E♭Key。転調後は E に半音上がりますが、C の Key にすると、C ⇨ D♭Key の動きになります。転調の動きは 02:57 です。「今日もあなたから」の「今日も」は G (=G7)。「あなた」が A♭ (=A♭7)。「から」が D♭(=D♭M7) です。この動きをどう説明しますか?
これ私の解釈ですが、
- G7 までは C の Key で A♭7 から D♭Key に移っています。A♭7 から P5 下の D♭M7 に進行しています。前と後の Key をうまく繋げる定番の一つとして、転調後のコードに Dominant 進行する 7th Chord を使うやり方があります。正にこのパターン。
ただ、C の Key から半音上の D♭Key への動きがスムーズなのはそれだけではないと思ってます。
- D♭M7は C の Key の中でも出てきます。Subdominant minor (Modal Interchange) の D♭M7。馴染みがあるコード。
- D♭M7 は C の Key では SDm でしたが、D♭Key では Main Chord (主和音) でコード機能は Tonic になります。A♭7 – D♭M7 は正に D♭Key の V – I 進行。
ではいつも D♭M7 の前に A♭7 を入れないといけないのか? そんなこと全くありません。これ聴いてください。適当に作りました。ジャ ジャ ジャ ジャ ジャ ジャンより後は上に書いた例のどれかに似ていますが、この程度は著作権で怒られることもないでしょう。Dm7 – G7 – CM7 と来れば完全に C Major Key。それが ジャンで D♭ Key に転調しています。この場合の D♭M7 は C Major Key から見ると SDm、D♭Key では Main Chord です。このように転調の境目で一人二役を演じて転調がスムーズに流れる Pivot (心棒) の働きをするコードを Pivot Chord と言い、Pivot Chord を置いての転調を Pivot 転調 (Pivot Modulation) と言います。
|Dm7 G7 | CM7 | C D♭ | D♭ | D♭ |
「やっぱり Pivot 転調かい」。そうなってしまいました。ただ、特徴的な Pivot 転調は Pivot Chord に Diatonic Chord を使うのでそれは次のページ以降で書きます。
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