06.1 コード構成音とコードネーム

コードの表記をまずしっかり押さえます

本題に入る前にいくつか押さえておくことがあります。

✔️ 三和音と四和音

左が三和音。右が四和音。三和音は英語で Triad。一方四和音の英語はというと、学校では Tetrad と習いましたが、実際こんなこと言っているのを聞いたことがありません。7th Chord というのは言葉として的確ではない (理由はあとでわかります)ので、ここでは四和音と書いていきます。

コードの下から順番に Root (根音)、3rd (第3音)、5th (第5音)、そして四和音だけ 7th (第7音)。なぜ、3rd, 5th, 7th と言うか? Root を1度とした時の度数です。「当然だろ」。はい、当然です。ですが、コードが込み入ってくると意外に忘れがちになります。7th を 5th との比較で何度と言うことはありますが、基本は Root からの度数。コードネームもこれで成り立っています。

上のコードはすべて3度で重なっています。ドとミは 3度、ミとソは 3度、ソとシも3度。こういう 3度で重なるコード(和音)を 3度堆積と言います。「コードは 3度で重なる。当たり前だろ」。実は、4度堆積のコードもあります。ありますが、イロモノです。王道は 3度堆積です。

更にもう一つ。「当たり前だ」と言われると思いますが、五線譜と言うのは Scale を書いた時に一段一段上がっていくと言う決まりになっているので、一段一段すべて同じ音程ではありません。ドとレは一段違いで M2、ミとファは同じく一段違いですが m2。従い、上のドミソのコードでは、ドとミは M3 ですが、ミとソは m3 です。コードを理解するには、五線譜に書かれた音が鍵盤のどこにあるか、鍵盤を Visualize (可視化) できるのかが大切です。

✔️ コードネーム

私の理解が正しければ、Chord Name の書き方の国際的な取り決めはないはずです。なので、国により、音楽のジャンルにより、もっと言えば個人の好みによりいろんな書き方があります。例えば、私のいた学校は下の「m」を 「−」(マイナス記号)で表記していました。「m」は minor の 「m」ですが、Major の「M」と間違えやすいので「−」。ただ、私の好みで言うと、「−」は手書きだと、サッと書いてしまい、見にくかったり見落としたりしてかえって危ない。なので「m」を使います。

ここではコードの中身には入って行きません。あくまで Chord Name をどう書くかの話です。

Chord Name の例です。これで構造がわかります。「構造は大袈裟だろ」。確かに。ただ、中身は結構複雑です。

1. まず Root です。大きい G と B です。コードはこの Root を1度として 3度堆積していきます。

2. 次に 3rd です。右のコードには 「m」と表記されている 3rd があります。左にはありません。これはコード表記の慣行で、Major Chord には特に何も書かない。2つあるうちの一つに印「m」が付いているんだから、何も付いていないのがもう一つの印になると言う発想です。王道側には付けない。音楽ではこの手の表記が結構多くて、クラシックの和声学でも似たような略し方をします。

3. Fifth (5th) です。右のコードには♭5と書かれた 5th が登場しますが、左のコードにはありません。これも上の 2. と同じ慣行で、5th が P5 なら書かない。♭5 (−5 = 減5度)とP5 を外れた時だけ表記します。ちなみに、Root の右側は二段になっていますね。何度は下の段に書いて、何度は上に書くかは覚えないといけません。

4. Seventh(7th) です。「7」と入っていれば、これは 3和音ではなく 四和音を意味します。コードが Major Chord ならRoot のすぐ右に書きます。minor Chord なら「m」の右に書きます。この 7th 表記のイヤらしいところは、「7」と書いたら m7 を意味するところです。C Major Scale の 7度は M7 なのに、なぜ m7 を王道とするのか? 私の多分合っている想像ですが、7th が一番登場するのは、G7 で、G7 の 7th が m7 だからだと思います。では、M7 はどう書くのか? 「7」ではなく「M7」とわざわざ大文字の「M」を入れます。他に 「Maj 7」と言った書き方もあります。いずれの場合も「M」は大文字です。

5. Tension です。正確に言えば Tension Note。まだ出てきていないので聞き流してください。Tension Note とは 9th, 11th, 13th のことです (スルーで問題ありません)。上の段はかっこ書きにしてますが、しない場合もあります。私のいた学校はしていました。かっこ書きの方が一般的だと思います。

Chord Name らしい Chord の書き方は上の通りですが、これ以降本文は一段書きで進めます。上の例で書けば G7(♭9, ♭13)、Bm7(♭5)。きれいに二段書きにしたいんですが、それが書ける Editor が見つかりません。また、♭ですが、半角の♭はないので、全角の♭になります。なので、♭の前とあとに少しスペースができてしまう。大目に見てください。

 くだらないので最後に書きますが、私は音楽の「印の付いていないのが印」と言う表記のやり方は良くないと思っています。表記の意味を曖昧にする。何となく胡散臭くする。違う中身のおにぎりが 3つあって、一つは梅干し、一つは高菜、もう一つはおかか。梅干しのおにぎりの上に梅の果肉を少し乗せて目印にし、高菜のおにぎりも同じように目印に。最後のおかかは目印がないのが目印。何となく危うさを感じません? 握ってくれた人が「目印のないのがおかか」と言うので、おかかだとは思うけれども、梅干しや高菜に比べて目印感が薄くなりませんか? 7th はもっとひどい。あの店の一番人気のおにぎりを買って来たと言われて、あの店は梅干しが人気だからこのおにぎりは梅干しだと想像を働かさないといけない。筋が通っていないですよね。

コード表記は筋が通っていないところもありますが、それも含めて押さえておく必要があります

This page originally written on 2020.12.30, revised on 2021.09.11

長年サラリーマンで現在プロ作曲家志望です。

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