03.7 五度圏その1

音律の起源が 5度です。C から 5度づつ上行していくと結局 C に戻ります。

下の図を五度圏と言います。英語では、Circle of 5th というのが一般的なようですが、Cycle of 5th と書いてある本もあります。この五度圏の説明を 「03. 音程」に入れるのは本来おかしい。本当なら「02.1 音律と音階」に入れるべきなんですが、完全 5度 (P5) という音程がわからないといけないので敢えてここに入れました。

この五度圏って音楽をやっていく上で大切です。なので、ちょっと長く、言い換えればダラダラと説明していきます。ちなみに五度圏の書き方は2通りあって、一つは上の図のとおり、もう一つは上の図を裏返しにした図です。裏返したとは、上の図でてっぺんの C の左横が G ですが、これが F になる図ということです。どちらでも構いません。

上の図の C とか G とか Fとかは Key (調)を表しています。例えば C は C Major Key。G は G Major Key。輪の外側の青字は全て Major Key です。 輪の内側の赤字は全て minor Key です。

Key を表しているんですが、これをコードネームと捉えても Note (音) と捉えても色々使い出があります。

「なぜ C の内側が Am (A minor) なのか?」 C の Relative minor が Am だからです。Relative minor。初めて出ました。日本語では平行短調。ある Major Key と同じ調号を持つ minor Key を Relative minor と言います。例えば、C Major は調号がつきません。白鍵だけの Key です。Am も同じく調号がつきません。この関係を Relative Key と言い、C から見たら Am は Relative minor になります。

✔️ 五度圏てそもそも何? どこから来たのか。

五度圏というのは Cをてっぺんにして5度 (完全 5度、P5) 離して Key を並べていき、それがぐるっと回って元の C に戻るという図です。輪の内側の minor Key でも同じです。C から G には P5 上行。 G から D には P5 上行と P5 づつ上行して行き、最後は F から P5 上行して C に戻るという図です。

C に戻る。不思議ですか? これ不思議でも何でもありません。C から B まで 12音あります。一方、C から G までは 8音あります。「あ、そうか。12 と 8 の最小公倍数か」。違います。12 と 8 の最小公倍数は 24 です。これだと C – G – D … と P5 づつ上がって行って 12 の Key が収まるのに 24鍵 (約 2 Octave) あれば良いことになりますが、実際にはそうはなりません。

ではどうするのか? 答えは 12 と 7 の最小公倍数です。ここが、音程のいやらしいところで、C から P5 上行して G に行きますが、その後 G を1度として P5 上行させると、G が重なってしまいます。なので、8 ではなく 8 から 1 を引いた 7 で 12 との最小公倍数 84 を求めます。 84 ÷ 7 = 12。12個の音が収まりました。88鍵あるピアノの一番左のドから初めて G、D、 A … と P5 づつ上がっていくと、一番右端のドでドに戻ります。

ここが今ひとつピンと来なかった方。スルーしてもらって全く問題ありません。

注 :   「C から B まで」とまどろっこしい言い方をせず、「1 Octave に」とスッキリ言った方が良いのかもしれませんが、1 Octave というと上の C まで含んだ13 音と取られるかもしれないので 1 Octave という言い方は避けました。

そもそも、何で 五度圏なのか、四度圏とか三度圏ではないのか。この答えを出すにはまたピタゴラス音律に戻る必要があります。

この図って見ただけで分かります? わかる方はしばらく読み飛ばしてもらって Okay です。わからない方に説明します。

1. まず、 上の青字の 1, 2, 4, 8, 16 は周波数です。本当の周波数ではありません。本当だったら、可聴域より低いので聴こえていません。あくまで、仮に低いドを 1 とした時の周波数です。「02.1 音律と音階」で書いた通り等比数列です。2 は 1 の Octave 上。4 は 2 のOctave 上です (and so on)。

2.  音は周波数比が単純なほど協和して聞こえます。1 の ドが 1 のドと重なったら完全に協和します。周波数比は 1 : 1 。この ド は Octave 上の 2 のドと周波数比が 1:2 になります。これも完全に協和します。ただ 1 : 2 の周波数比だけだと使える音は ドだけになってしまう。そこで 1 : 3 という周波数比が登場します。ピタゴラスは 1 を 3倍すると (1 : 3) 今でいうソになり、これもドと協和することから、3倍・3倍で音律を作って行きます。まず、赤字のソですが、これだと一番左の Octave に収まらない。Octave 下にするためには、このソの音を 2 で割ります (周波数 2倍はOctave 上になるので、2 で割れば Octave 下になる)。それが緑で書いたソです。

3. ではソ(G) を 3倍するとどうなるか? ソの5度上 (P5 上)のレになります。ただ、レの周波数はソの 3倍になるので下のドを 1 とすると、3 X 3 = 9 となりすごく周波数が高いところに行ってしまう。一番下の Octave に入れるためには、9 を 2 で 3回割る必要があります。 9 ÷ 2 ÷ 2 ÷ 2 = 1.25。レ (D) になります。五度圏の C から 5度上をたどって行くと、C ⇨ G ⇨ D となります。これを続けると五度圏のとおりで C ⇨ G ⇨ D ⇨ A ⇨ E ⇨ B となり、正に C Major Scale で使う音が決まっていきます。

「まだ F が出て来ない」。確かに。上の話の通りなら五度圏で B の次は F が出てきそうなものですが、出てくるのは F♯。「音律と音階の科学」(小方厚著) ではピタゴラスの時代の Scale は、ドレミファ♯ だったと言っています。では何でドレミファ♯ がドレミファになったのか? 分かりません。ネットで調べても出てきません。私の根拠のない想像を書いてもいいんですが、既に長くなっているこのページが更にダラダラになってしまうのでやめておきます。とまれ、結果として  C Major Scale に入っていた F♯ は F に替えられた。C という C Major Scale の Star Player は C から遠くにいる F♯ よりもすぐ隣にいる F の方がコンビが組みやすかったというとこでしょう。

これが、 「02.1 音律と音階」で積み残して来た音律をどう決めたのかの説明になります。 納得できました? 一つだけ注意。今私たちが使っている音律は 12 平均律なので、ピタゴラス音律から少し周波数の調整が入っています。

五度圏は是非覚えてください。

This page originally written on 2020.12.22, revised on 2021.08.30

長年サラリーマンで現在プロ作曲家志望です。

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