07.1 Natural minor Chord の構造と機能

3種類あるminor Scale の中で一番素直な Natural minor のコードです

音は 1 Octave 落としてあります。

C Natural minor です。前にも書きましたが、minor Scale とその Diatonic Chord を理解するためには、Parallel minor (同主短調) である Cm でやるべきで、Relative minor (平行短調) の Am でやってはいけない。これが私の持論です。だって Am でやると、使う鍵盤もコードも C Major と同じになってしまうので。

Natural minor はコードの機能について納得感のある説明ができるか自信がありません。なので書くのに少しもたもたしました。

まず、略語の説明です。

  • Tm    :  Tonic minor。Major Key の Tonic に相当。
  • SDm  :  Subdominant minor。Major Key での SD に相当。
  • Dm    :  Dominant minor。Major Key での D に相当しません

C Major Key は T, D, SD が数だけで言うとうまくバランスしていたように見えますが、Natural minor は SDm ばっかりです。上の五線譜は、学校で教わった Nm の Diatonic Chord の機能です。学校では入ってすぐに、Nm Chord の機能はこうですと教わり、そうなのかと覚えたんですが、何でそうなのか考えることなく覚えただけでした。

ではコードの機能を念頭において書いていきます。

✔️ Cm7

言わずと知れた C minor Key の主和音です。これが Tonic minor でなければ誰がなるのかぐらいの Tonic minor です。Scale の主音を Root に持って、3rd には調を決定付ける E♭音 (E か E♭かが、Major か minor key かの境目)。これ以上の説明は要らないと思います。

✔️ Dm7 (♭5)

C Major Key の Dm7 に相当するコード。これが SDm には異論はありません。

✔️ E♭M7

C Major Key の Em7。調を決定付けるE♭が Root のコードなので、Tm で納得。

✔️ Fm7

C Major Key の FM7。これも SDm で納得。

✔️ Gm7

ポップスもクラシックの和声学も、minor Key の締め (Cadence) では Gm7  ではなく G7 を使います。G7 が持つ Leading  Tone の B音が C音に進行しないと締めにならない。Gm7 は  Dominant minor ですが、C minor Key で G7 が登場すると、Dominant minor ではなく Dominant と呼ばれます。ポップスの理論は、Leading Tone が必要なので、G7 を Harmonic minor から借りて来た。和声学は、B♭音を臨時記号で半音高めて導音とする。

では、Gm7 ⇨ Cm7 は締めの感じがしないのか? 適当にメロを付けたので聴いて見てください。

どうですか? 確かに、G7 ⇨ Cm7 より締めの感じは弱いとは思いますが、まあ、ありかな? 決して進行自体おかしいものではないでしょう?この理由は強進行だと思います。強進行とはこの場合、Gm7 の Root の G音 が Cm7 の Root の C音に 5度 (P5) 下行進行することです。5度下行は進行としては最強です。

では、G7 ⇨ Cm7 の締めの感じを聴いてみてください。Gm7 のとき B♭音 を置いたメロを B音に変えています。

どうです? こちらの方が締めの感じが強いですね。G7 ⇨ C の進行が鉄板なのは、① Root の強進行と ② Tritone (B音とF音) の解決という理由でした。G7 の B音が C の C音に解決する。F音は E音に解決する。どちらも半音の動きですが、G7 ⇨ Cm7 になると G7 の F音は E♭に解決します。半音ではなく全音です。これを Tritone の解決と言うのか? 

上のコードは 5th を抜いてあります。この説明に必要ないので。私のいた学校は Tritone の解決と言っていました。F音・B音の Tritone という状態が無くなれば良いので、半音でないとダメみたいなうるさいことは言わない、と解釈していました。実際、聴いてみてどうですか? まず G7 ⇨ C。Tritone だけ鳴らします。

今度は G7 ⇨ Cm。Tritone だけ。

どちらも同じように締め感があると思いません?

ポップスのコード理論では、締めで Harmonic minor から借りて来た G7 を 使う。ただ、Gm7 が G7 に完全に乗っ取られたわけではなく、Gm7 も使えるということです。

もう一つ言っておかないといけないことがあります。上の Gm7 ⇨ Cm7 の五線譜は、B♭音ではなく B音が置かれています。ということは、C Natural minor Scale ではない? Nm だったら、B♭です。B音を使っているということは、C Harmonic minor か C Melodic Minor になります。C Harmonic minor は A♭とB の間が増2度音程でメロには適さないので、C Melodic minor Scale と考えるのが自然です。ではこれはどうですか?

これは Nm で作ったメロに G7 をぶつけています。上の五線譜の B♭は G7 の ♯9th になります。つまりは使える Tension です。なので聴いた感じは変ではないですよね。

✔️ A♭M7

さて問題の A♭M7 です。Major Key では Am7。コード機能は Tonic です。Nm だと A♭M7 になりコード機能は SDm。Natural minor Scale が SDm ばっかりになる一つの原因がここにあります。私は学校で習った時に、やたら Nm は SDm が多いなと思っただけで、それ以上掘ることはしませんでした。ただ、ある時、何で A♭M7 が SDm なんだろうと思い始めました。上でも書いたように Nm の Tonic たる所以は、Scale の主音である C音を持っていること。もう一つは調を決定付ける E♭音を持っていること。A♭M7 はこのどちらも持っています。何で SDm なんだろう? 芸大和声の勉強を始めて驚きました。A♭(M7) の扱いは Tonic になっています。

これ聴いてみてください。赤枠が Cm になっています。

次に赤枠を  A♭に変えたのを聴いてください。

赤枠 Cm の方は 100% Tonic minor ですが、青枠 A♭の方はどうでしょう? Tm と SDm の中間のような感じがしません? A♭音が SDm 感を出しているように聴こえません? Tm の Cm や E♭M7 が持っていない音が A♭です。皆さん絶対言いますよね。「Major Scale の Am の A音も C や Em にはない」。ぐうの音も出ません。これ以上の説明をするには「特性音」が分からないといけないんですが、まだ書いてないのでここで止めておきます。

✔️ B♭7

 「これが SDm?」と直感的に思う方が多いはずです。7th Chord は Key で唯一の構造を持っています。下から M3, m3, m3。この構造は Dominant で決まりだと普通は思います。7th Chord なので、ルートの強進行 (5度下行) と Tritone の解決というところで見ると、B♭7 の P5 下が E♭M7 でどちらも満たしています。Cm7 は強進行はありませんが、Tritone の解決はあります。「それって B♭7 が Dominant という前提での話。B♭7 は SDm だという説明になっていない」。確かに。

普通 Dominant は Tonic に進行します。C Major Key だと、G7 ⇨ CM7。「06.9 Cadence」で書きましたが、G7 は Am (Tonic) にも Em7 (Tonic) にも進行できます (偽終止 = Deceptive Cadence)。和声学では、Dominant が進行できるのは Tonic  だけです。。そこで、B♭7 が D や SD に進行できるなら B♭7 のコード機能は SDm という推測は成り立つと思います。これ聴いてください。適当に作りました。

どうでしょう? B♭7 ⇨ G7 おかしくないですよね。B♭7 を SDm と認定してくれますか? 「さっき Dominant 前提の話をした」。確かに。 B♭7 について「コード理論大全」には「Dominant minor と呼ぶこともあります」と書いてあります。

minor Scale の中では一番素直ですが Major Scale とは違ってどうしても説明に無理感が出ます

This page originally written on 2021.01.22, revised on 2021.10.10

長年サラリーマンで現在プロ作曲家志望です。

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