18.3 メロの音の仕分け
前のページで書いたように、Voicing は音の積み上げですから五線譜に音符を書いていくことになります。これが面倒。面白くもなんともないし。ただ Voicing は理解しておかないと音を積むときに勘でやることになりますし、勘だけだとかっこいい積み方はできないと思います。面倒な Voicing ですが、音符と格闘する前にまず頭を整理しておくと効率よくわかります。
それがメロの音の仕分けです。
まず篠田元一さんの実践コードワーク アレンジ編に出ている仕分け表をほぼそのまま出します。
この図わかります? メロの音は 2つに分けられます。Chord Tone (和声音) or Non Chord Tone (非和声音)。Chord Tone だったら前のページで書いた通り簡単です。Chord Tone は Triad ではなく 4声で見るので、C のコードが鳴っていて、メロが C or E or G or B音ならラッキーと思い、残りの Chord Tone を重ねるだけです。ただ、曲が Chord Tone だけでできているなんてあり得ませんから Non Chord Tone にも音を重ねないといけません。Non Chord Tone はさらに 2つに分かれます。
- Tension Note
- Approach Note
下の図では Tension Note と Approach Note が重なっている部分があります。
ここは説明が必要です。Tension Note はお分かりの通り Chord に乗せられる Non Chord Tone です。では Approach Note とは? ド – レ – ミ〜 というメロがあり、コードが CM7 を鳴らしているなら、ドとミは Chord Tone。レはミに向かう Approach Note です。ミ – ファ – ソ〜 というメロで コードが Em7 だったら、ファが Approach Note です。
注意しないといけないのは、Tension Note の反意語が Approach Note ではないことです。違う言い方をすると二者択一ではありません。だって、Tension Note はコードの上に乗せられる言わば縦の関係性であり、Approach Note はメロの流れ、言わば横方向の流れの中で決まる関係性だからです。
上の例で言うとコードが CM7 で ド – レ – ミ〜 と鳴っているときのレの音は、CM7 の 9th ですが、同時に Approach Note になります。これから書いて行きますが、Tension Note と Approach Note では音の積み上げ方が違います。ド – レ – ミ〜 のレの場合は、Tension Note と見た場合の積み上げ方も、Approach Note と見た場合の積み上げ方もできると言うことです。
しつこく書きます。メロのある音が Tension であり、Approach Note ならどちらの積み上げ方もできます。
皆さんモヤモヤしてません? 「Tension Note ははっきりしているが、Approach Note がどれかすぐ見つけられるのか?」確かに、メロの流れの中で見つけるので Tension Note のように白黒がはっきり付きにくい面はあると思います。Approach Note の特徴と傾向を書いて例を示しますので、それで Approach Note を理解してください。
まず特徴と傾向ですが、
- Approach Note の後のメロ音に順次進行 (2度進行)する。2度というのは M2 と m2。ド – レ – ミ〜 だったら M2 でミに向かうレが Approach Note。
- 音価 (音の長さ)が短い。単位拍内。4/4 拍子だったら、4分音符の長さまで。ド (1拍) – レ (1拍) – ミ〜 (2拍) だったらレは 4分音符なので Okay。
- 多くは弱拍に置かれる。曲には必ず強拍と弱拍がありますが、多くは弱拍に置かれる。皆さんがド – レ – ミ〜 を頭の中で鳴らした場合、Jazz とか Rock の After Beat で鳴らさない限り、レは弱拍です。
Ex-01 で書いたチューリップの出だしです。赤丸はコード C の場合の Approach Note。青丸はコード G の Approach Note です。
Jazz の名曲 Fly me to the moon の出だしです。この程度なら怒られないでしょう。赤丸は全て Approach Note 且つ Tension です。
感じつかめて来ました? では次を聴いてください。適当に作りました。
赤丸見て下さい。Am7 の 9th。ではこれは Approach Note なんでしょうか?
- 次は G音で 2度進行ではありません。
- 音価が長い。
- 強拍。Syncopation してますから、本来の弱拍が強拍に変わっています。
と言うことで、これは Tension Note ですが、Approach Note ではありません。なので、Tension Note の場合の音の積み上げになります。Approach Note の積み上げは使えません。
次のページから実際の積み上げに入ります。
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