Ex-59 「春よ、来い」のサビ頭の F
松任谷由美さんの「春よ、来い」のサビ頭のコードのお話です。原曲 Key D♭ or B♭m を C or Am に直します。
https://www.youtube.com/watch?v=qX7pFYH9O04
本題に入る前に、このサビの Key は何だと思われますか? 上の譜面の 2小節目の終わりの「春よ」以降がサビです。C Major Key or A minor Key です。どちらでしょう? 3 小節目以降同じコード進行が繰り返されています。 F – G – Am。
F – G – Am の進行をどう説明しますか? 真っ当な答えは、Subdominant の F から Dominant の G に進行するが、その後 Tonic の C に行かずに同じ Tonic の Am に進行する Deceptive Cadence (偽終止)。つまりは C Major Key。
ではなぜ A minor Key ではないのか? A minor なら G ではなく E (E7) が入るはずです。Am Key の 5度の Dominant Chord。G を E7 に変えました。
全然変ではないですよね? ただ、やっぱり G の方が断然曲の雰囲気が出ていると思います。
さて、本題です。
F のコードが鳴っているときにメロで鳴っているのは D音です。D音は F のコードの 6th or 13th です。F の機能は Subdominant なので D音は取れる Tension になります。なので F のコードに D音を合わせることは理論上問題ありません。
ただ、普通メロで D音が鳴ったらそこで鳴らすコードは Dm or Dm7 になるはずです。F の Chord Tone の下に D音を置いたら Dm7 になります。と言うことは Dm7 でいいじゃないかと普通は思います。F を Dm7 に変えてみました。
どうでしょう? 全然おかしくありませんし、ドンピシャと言う感じ。ただ、ドンピシャ過ぎて、面白くも何ともないし何より曲の雰囲気を壊してしまう。
F のコードに D音のメロを足したのと Dm7 は構成音が同じなんだからそこはどうでもいいんでしょうか? それはちょっと違うと思います。あくまで F のコードの上に D音のメロをぶつけることで、微妙なメロとコードの分離感とそれが引き出す独特の雰囲気を出しているんだと思います。
ピアノのイントロのパターンも最初が F のコード (正確に言うと F omit A) に D音を当てています。イントロで雰囲気を作っておいてサビで全開。勉強になります。
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