Ex-19 「カブトムシ」のサビは転調?
aiko さんの「カブトムシ」のサビの話です。
https://www.youtube.com/watch?v=wp2U40KI63A
サビは、
「流れ星流れる苦し嬉し胸の痛み生涯忘れることはないでしょう」
上の青字部分は転調だと思っていました。なので転調の例として書こうとしたんですが、本とかネットに出ているコードを見ると転調しているとは言えないようなコード。果たして、転調なのかどうかというのがこのページのお題です。上に引用した Youtube を聴くと私には「生涯」で転調しているように聴こえます。聴こえません?
本とかネットは大体どれも同じコードを付けています。それを C の Key に直して譜面にしました (原曲は E♭)。
5・6 小節目のコードをどう納得したら良いか考える前に、いくつか普通のコード付けをしてみます。ポイントは、5小節目の Non Diatonic の F♯ 音で、ここに FM7 は使えません。
✔️ F♯m7(♭5) から始まるパターン
何と言ってもこれが定番でしょう。F♯m7(♭5) – Fm6 – Em7 という流れはよく出てきます。Fm6 の代わりに F6 もあると思います。F♯m7(♭5) は何気に良く出てくるコードなんですが、「なんでこんな Diatonic とかけ離れたコードが」と思う方もいると思います。私の行っていた学校ではこの F♯m7(♭5) を「代理 Subodminant」、つまり FM7 とか Dm7 といった SD コードの代理として使えるコードだと教えていました。私は D7(9) から Root を外したコードだと思っているんですが、まだ自信がないので胸張っては言いません。
✔️ D7 から始めるパターン
D7 – G7 は二次 Dominant です。G7 – Em7 は、G7 が CM7 に進んでいないので Deceptive Cadence (擬終止)。
✔️ Diminish から始めるパターン
E♭dim7 は次の Dm7(♭5) に半音下行で進む Passing Diminish と考えて良いと思います。Dm7(♭5) は Modal Interchange。C Natural minor からの借用です。Diminish Chord が頭に来ると少し重たく聴こえます。6小節目に A7 を置きました。A7 – Dm7 の二次 Dominant ですが、メロが C音で A7 の ♯9th になります。♯9th は理論上は Okay 何ですが、この曲の感じからは重すぎるように思います。
✔️ D Major Key に一時転調のパターン
5小節目が D Major Key への一時転調だと分かります? 私にはどうしても転調に聴こえるのであれこれ考えてみたんですが、手がかりは 5小節目のメロと 6小節目のメロです。6小節目を M2 上げると 5小節目のメロになります。6小節目は C Major Key なんだから、M2 上がった 5小節目は D Major Key。6小節目の定番コードは Em7 – Am7 なので、それを 2度上げて F♯m7 – Bm7。
もう一つ。E♭7 はわかりますよね。E♭7 が進む先は Dm7 でその二次 Dominant は A7。A7 の裏コードが E♭7 です。裏コードを使うことで、Root がきれいに半音で下行します。では原曲ですが、E♭7 ではなく E♭6 です。E♭の 6th は E♭の 13th と同じです。コードとしては E♭7 で良いと思いますが、メロの C音が E♭の 6th なので E♭6。7th をはじいたのは、曲調から Dominant 7th を嫌ったからだと思います。
原曲のコードと比べてみます。
原曲 : F♯m – F6 – Em7 – E♭6
転調パターン: F♯m7 – Bm7 – Em7 – E♭7
似ていると言えば似ていますね。ただ、全然違うのが F6 と Bm7。F6 は 6th を一番下に持って来れば Dm7 です。やっぱり Bm7 とは全然違います。私の解釈は F♯m が鳴っているときは D Major Key に一時転調しているが、F6 で C Major Key に戻った。これも私が勝手に解釈する作曲家・編曲家の意図は、
- ♪「生涯」のところは明るく雰囲気を変えたかったので、定番の F♯m7(♭5) にはせず、D Major Key の IIIm7 の F♯m を使った。
- 一方でサビの一番大切なところなので、コードを Smooth に流したかった。なので、F♯m から Root が半音で下行していくコードが欲しかった。
ということで私の解釈は一時転調なんですがどうでしょう?
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