Ex-43 Em は2つの顔を持つ
前のページで荒井由美さんの「あの日にかえりたい」のコードについて書きましたが、その時 Em の機能の話をすれば良かったと後で思ったので書いておきます。
皆さん Em (Em7) のコードの機能がわかりますか? コードの機能と言うのは、Tonic or Dominant or Subdominant のことです。Em7 なんだから Tonic で決まり。その通りです。なんですが、和声学ではEm7 (or Em) が Am7 に進む場合は Dominant、FM7 or Dm7 に進む場合は Tonic です。驚きません? 私は驚きました。
- Dominant : Em7 ⇨ Am7
- Tonic : Em7 ⇨ FM7 or Em7 ⇨ Dm7
Em7 の Tonic 機能はその通りなので横に置いて、なぜ Em7 が Dominant になるのか? 以下は私の想像です。
Em7 – Am7 の進行は王道進行の一部です。FM7 – G7 – Em7- Am7。王道進行の例としてこのサイトの Ex-10 で取り上げた「LOVE マシーン」です。
どうでしょう? Em7 が Dominant と言う感じはしませんよね。それに、Em7 が Dominant としたらその前の G7 も Dominant で Dominant の連続になります。ただ、和声学はなぜか G7 – Em7 の Dominant の連続は許容しています。
手がかりは Relative minor 上の Em7 – Am にあると思っています。C の Key の Relative minor (平行短調) は Am。Am Key で書いた「あの日にかえりたい」の下の赤枠が Em7 です。Em7 は Am Scale の 5番目のコードで機能としては Dominant minor。普通は Harmonic minor から借りてきた E7 を使いますが、ここでは Em7 が登場しています。「07.1 Natural minor Chord の構造と機能」でも書きましたが、Em7 は Dominant 7th の特徴である Tritone は持っていませんが、Am に向かって 5度下行する強進行により解決感が出てきます (そう私は感じています)。
ついでに言っておきますとサビの最後の「あなたに会いたい」も Em7 – Am の進行です。
もう一つ。八神純子さんの「思い出は美しすぎて」です。これもボサノバ調です。私の頭の中にはこの頃のボサノバ調の曲として丸山圭子さんの「どうぞこのまま」を加えた 3曲がセットで入っています。
https://www.youtube.com/watch?v=MqEBL_PmAtM
原曲 Key も下の譜面も Am です。サビの最後部分。
Relative minor の Am Key で Em7 – Am7 が 実質 Dominant として成立しているので、C Major Key にある Em7 – Am7 も同様に捉えられると言う理屈 (だと勝手に解釈しています)。
いろいろ書きましたが、これでコード付けが変わることもないので、「どうでもいい」と言われそうな話でした。
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