06.4 コードの機能
コードにはそれぞれ機能があります。T、D、SD です
コードを機能 (Function) で分けると、Tonic (主和音)、Dominant (属和音)、Subdominant (下属和音) のいずれかになります。と書くと一応もっともらしいんですが、実際、私がこの機能について理解しているかと言えば多分教わったことを鵜呑みにしているだけで、ちゃんと理解はしていないんだろうなと思います。なので、このページは人様の引用が多くなると思います。
まず押さえるべきは、調性音楽 (Tonal Music) だから、その中に出てくるコードに機能が付くということです。生まれてこのかたずっと聴いて来たのが調性音楽。コードに主役と脇役がいる調性音楽。主役と脇役がどういう役回りになっているかというのがコードの機能になります。
✔️ Tonic (T)
Tonic のコードの機能は Triad で 説明します。Triad の方がよりくっきり説明できると思うので。
C (ドミソ) です。これが C Major Key の主役です。安定感と落ち着きがあります。曲も大体主役の登場で始まり、最後主役が締めます。なぜ、Cが主役なのか? Scale の主音である C音 (ド) と Key を決める E音 (ミ) を含んでいるからだと、学校の教科書は言っています。
まず、「C 音を含む」ですが、当たり前と言えば当たり前ですね。C の Scale なんだから。ではなぜ E音なのかわかります? Scale の最初の音が C 音だったら、Scale 自体が決まるかと言えばそうではありません。C Major Scale かもしれないし、C Natural minor Scale かもしれない。C Melodic minor Scale の可能性もある (C Harmonic minor Scale なんてことはまずありません)。では、Major Scale (つまりは Major Key) なのか minor Scale (つまりは minor Key) なのか、どこでわかるかと言えば、それは E音です。 E なら Major Scale, E♭なら minor Scale。C or Cm。つまりここが Major か minor の分かれ道になります。
他にコード機能として Tonic を名乗るコードがあります。 Em と Am です。主役 C の代役です。代役なんだから、C の Root である C音を持ってなくても、せめて E音は持っていて欲しい。これを満たす Diatonic Chord は Em と Am になります。
「C の 5th、ドミソのソはどうなるんだ?」この場合、ドミソのソなんてどうでもいいです。これは言い過ぎでした。正しくは、コードを機能面から見るのに、5th は特に重要ではない。コード理論でもクラシックの和声学でも、5th (ソ) は省略できるとしています。私の解釈では、理由は 2つ。一つは、Major Scale でも minor Scale でもソは出てくる。ソが C のコードの中で特徴的な音ではないということ。もう一つはドが鳴れば、ソが倍音で鳴っている、それも低次倍音で (ここはこれ以上掘りません)。
✔️ Dominant (D)
ここはG7 ⇨ C で説明します。
G7 (ソシレファ) です。主役の脇を固めるコードです。「脇」は失礼か? 助演というべきか? Dominant は主役に擦り寄ります。G7 が鳴ると次は主役登場だと想像します。主役に行きたがる (進行したがる) コードが Dominant です。
上の五線譜は G7 の 5th が抜いてあります。5th は上の Tonic のところで書いた通り、省略できる音で、G7 ⇨ C を説明するのに不要です。ピアノの音は 1 Octave 下げています。
まず Root の強進行です。何かというと G7 の Root の G音 (ソ)が C の Root の C音 に進行してます。P5 下行進行。これを強進行と言います。「03.7 五度圏その2」で書きましたが、ほぼ調性音楽だけ聴いている私たちにとって、P5 下行進行は一番進行感がある進行です。この強進行を英語で何と言うか? Dominant Motion と言います。ただ、私の理解では、この言葉は Root のP5 下行進行だけを指す場合と、Tritone の解決も含めて Dominant Motion と言う場合の両方があります。もっと言うと、一番一般的な Dominant Motion の使い方は、7th Chord が P5 下のコードに進行することを言っていると思います。
次に Tritone の解決です。G7 の B (シ) と F (ファ) です。三全音、増4度 (=減5度)。一番不安定な音程です。不安定だから進行して安定したい。ではどうするか? B (シ) は C (ド) に進行して解決します。解決というのは、不安定が解消され安定して良かったということです。F (ファ) は E (ミ) に進行し解決します。B も F も解決する先が半音。学校の教科書には「半音は全音よりも水平方向への推進力が強いことから、この声部進行を含んだ連結は進行感が増す」とあります。つまりは、Tritone を含んだ G7 のようなコードは C に行くぞという気分満々とうことです。
ここで指摘されそうなのが Leading Tone (導音) についてです。「04.1 Harmonic minor」で、C Major Scale の B 音は強烈に C 音に行きたがる音だと書きました。「B 音が入っている、例えば CM7 の M7th (B音)、Em の 5th (B音)、とか C 音に行きたがっているようには聴こえない」。確かに聴こえないですね。これについては芸大和声 (クラシックの和声学) に説明があります。固くない言い方に訳すと「B を Leading Tone として扱うのは、B が G7 の 3rd の時だけ。かつ、G7 が C に進行する時だけ」。上の Tonic の説明で、CM7 ではなく C (Triad) を使ったのは、CM7 が B音を含むので B音の扱いを説明する必要があったからです。ここで一応説明したつもりです。
G7 の代役として Bm7 (♭5) も Dominant です。Dominant の用件である B音 と F音 の Tritone は持っていますが、強進行 (Root の P5 下行進行) はありません。上の芸大和声にある Leading Tone の説明からも B音はこの場合 Leading Tone ではありません。実際 Bm7 (♭5) は可哀想なコードで、まともなコードとして扱ってもらっていません。G7 の Root 省略形として (そうすると芸大和声の Dominant 要件を満たすので) 辛うじて認めてもらっているという G7 の一形態に過ぎないんです。
G7 の Root 省略形という説明って納得感あります? 正直私はありません。そんなこと言うなら、Em は CM7 の Root 省略形だし、F は Dm7 の Root 省略形になります。でも実際 Em や F がこういう扱いを受けることはありません。もっと言えば、Root 省略というコードにとっての一大事をさらっと省略という言葉で片付けてしまっているところにも納得し難いものがあります。
✔️ Subdominant (SD)
FM7です。母親の Tonic にベタベタしたがる子供が Dominant ですが、もう一人の子供は、あちこち自分で歩き回るのが好き。別に母親や兄弟を嫌っているわけではないので、兄弟と仲良く一緒に遊んだり、母親の元に帰って来たり。これが、Subdominant (SD) です。
SD はF音を持ちます。これが特徴その1 です。G7 と Bm7 (♭5) も F 音を持ちますが、Dominant の F音は一番不安定な Tritone を構成する音です。不安定の片棒を担いでいる。また、F音は E音に進行して解決するという制約があります。これに対して SD の F音はこういう制約がなく、FM7 の Root として堂々としています。特徴その2 は B音を持たないことです。Dominant は Leading Tone の B音を持つのが特徴ですが、SD は B音を持ちません。
この特徴は SD の代役たるDm7 にも当てはまります。Dm7 の場合 F音は 3rd で上の Tonic で書いたように、3rd は Major or minor Scale を決める大切な音です。B音も持ちません。
ここで一つの疑問。Dm7 は FM7 の代役程度に過ぎないのか?「06.3 長調のコードの構造」の Dm7 のところでも書きましたが、
Dm7 ⇨ G7 ⇨ CM7 は超定番コード進行です。FM7 ⇨ G7 ⇨ CM7 よりも多く出て来ます。これは絶対に Root の強進行 (P5 下行進行)のおかげだと思います。このおかげで、主要三和音 (CM7、G7、FM7) の一つである FM7 と並び立つ感じになっています。Dm7 と FM7 を比べてみると、Dm7 の方が Dominant に強く引き寄せられる (強進行によって)感じが強い。これに比べて、FM7 の方が自由度が高い気がします。FM7 は G7 を介さず直接 CM7 に進行しますが、Dm7 ⇨ CM7 はないとは言いませんがあまり見ないですね。どころの話ではなく、芸大和声では禁じられています。
コードは3つの機能のうちどれかを持ちます
This page originally written on 2021.01.06, revised on 2021.09.14
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