EX-16「エリーゼのために」のここのコードわかります?

「エリーゼのために」は皆さん絶対知ってますよね。ベートーベンのピアノ曲。可愛いお嬢さんが弾いている曲というイメージ。この曲の後半の楽譜です。青枠赤枠緑枠のコードがわかりますか?

楽譜が小さくてすいません。いくつか注釈を付けておきます。

  • 四角で囲んだ Am とか B♭は Key です。
  • このサイトは何があっても C Major or C minor で書いていますが、 Cm で書くと B♭Key が D♭になり♭が5つも付いてしまうので、例外として原曲通りの Am と B♭で書いています。
  • E7 は 7th の音が鳴っていなくても E ではなく E7 で書いています。これが Dominant 7th だとわかってもらうためです。
  • コードは私が入れたものですが合っていると思います。

✔️ 青枠

9・17 小節目に出てきます。G Clef (ト音記号) の 4つの音符を見ると音符の間隔がすべて m3 なので Diminish 7th です。F Clef (へ音記号)の方の音は A なので、普通に考えれば Edim7/A になります。そう表記してある本もあります。

これ違いますよね。Edim7/A だとすると、Am – Edim7/A – Dm となりますが、なぜ突如 Edim7/A が出て来たのか理屈を説明できます? 少なくとも私にはできません。

まず除外できるのが E7 です。E7 という Dominant 7th が Subdominant Chord に進むことはまずありません。実際現代の曲では出て来ますが、クラシックの和声楽では Dominant 7th が進む先は Tonic Chord だけで SD には進めません。

可能性として一番高いのは、A  Natural minor の Am・Dm 以外の Diatonic Chord ですが、コード構成音が合いません。

なら、Non Diatonic Chord から見つけることになりますが、SDm (Subdominant minor) はあくまで長調の曲が借用してくる Parallel minor (同主調) のコードなので、短調の場合はありえません。

そうなると、可能性のあるのは 2次 Dominant Chord ではないかという想像はできます。

Dm に向かう 2次 Dominant Chord は A7 です。A7 で Okay か見てみると A7 (♭9) がピッタリはまります。

✔️ 赤枠

まず 11小節目の赤枠です。古典派の巨匠の曲なので、Am コードという A Natural minor Key の Main Chord に進むコードと言えば Dominant 7th の E7 をまず考えます。そうすると G Clef にある音は E7 (♭9) の構成音ですが、F Clef にある A音は構成音ではありません。これをどう整理するんでしょう?

A音とG♯音 (A♭音) は半音の関係にあります。コードで半音が出てくるのは、M7、♭9th、♯9th、♯11th、♭13th のコードです。A音とG♯音を M7 コードに入れようとすると AM7 なら A音が Root に G♯音が M7th になりますが、他のコード構成音が譜面の音と合いません。同じように ♭9th など他のコードでやっても構成音が一致するコードはありません。

ということで F Clef の A音はペダルとしか考えられません。8小節目から A音がずっと連打されますが、低いところで A音が鳴っているので 2 Octave 上で鳴っている G♯音との半音のぶつかりが気にならないということだと思います。

私の答えは E7 (♭9)/A です。もっと正確にいうなら E音が入っていないので E7 (♭9)/A omit E です。

23小節目の赤枠はベースが B音で E7 の Chord Tone なので特に説明は要らないですよね。ベースまでコードに反映させるなら E7 (♭9)/B omit E になります。

✔️ 緑枠

14小節目に出て来ますが、これは少し厄介です。構成音を見る限り dim7 コードに見えます。まず上のやり方で Diatonic Chord がハマるか見ますがハマりません。2次 Dominant だとすると次が Am なので 2次 Dominant は E7 ですがこれもハマりません。ということは dim7 コードになります。

Passing Diminish と捉えると Dm の次なので D♯dim7 になります。構成音を確認すると確かに D♯dim7 です。ただ D♯dim7 のあとのコードが Am なので Passing Diminish ではなさそうです。と一見そう思うのですが、下の譜面を見てください。各コードの上 2つの音はずっとそのままで、下 2つが半音づつ上がって行きます。

うまくつながっている感じがしますね。13 から 15小節目のベースの動きを見てください。半音づつの上行でスムーズです。ほぼ Passing Diminish の D♯dim7 で良いと思います。

ネットを見ていたら、15小節目の Am は Am/E なので E音の 5度上の B7 が Am/E に向かう 2次 Dominant でその裏コードの F7 (♭9) なんですと言っていましたが、これは違うと思います。Am/E は E音が Am の構成音なので単に Am の 2nd Inversion (第2転回形) です。Am に向かうのは E7 であって、B7 や F7 ではありません。

以上ですがこの曲ですごく気になるところがあります。14小節目の F Clef の A音が完全に L.I.L. (Low Interval Limit) を踏み越えてしまっています。少なくとも私の耳には濁って聞こえます。F Clef の D♯と A音をロングトーンで鳴らすとうなりが聞こえます。短い16分音符の連続なので良しとしたんでしょうか?

長年サラリーマンで現在プロ作曲家志望です。

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