Ex-17 「クリスマスイブ」のコードの解説
山下達郎さんの名曲「クリスマスイブ」です。ネットを見たら 1983年発売の曲だと書いてありましたが、曲もサウンドもまったく古さを感じません。というか、この曲はこれからもずっと残っていくと思います。
https://www.youtube.com/watch?v=ONIzg3MSoIY
コードも難しくないのにありきたり感がありません。原曲 Key は A ですが、例によって Key of C で。まず、ピアノの右手が単音のメロ、左手がコードで聴いてください。
譜面です。ピアノの音より Octave 低くして作りました。
① 赤丸に青の数字の ① です。1小節目から 7小節目まで Root (ベース音)がドシラソファミレと C Major Scale どおりに一つづつ落ちて行きます。1小節目はコードが C ということは Root (Bass) も当然 C音 です。2小節目は G/B なので Bass は B音 ですが、B音は G コード の Chord Tone です。G コードの第一転回形 (1st Inversion) とも言えます。3 小節目は Am7 なので Root は A音。
4 小節目は Em7/G なので Bass は G音ですが、G音は Em7 の Chord Tone。Em7 の第一転回形 (1st Inversion) です。5 小節目は FM7 なので Root は F音。6 小節目は Em7 なので Root は E音。7 小節目は Dm7 で Root は D音。並べるとドシラソファミレになります。
こういう雰囲気の曲であまり Bass 音があちこち飛ばずに一つ一つ下りていくパターンは結構あると思います。
② 8 小節目の G7(♭9) ですが、ネットを見たらコード表記を Diminish 7 にしているものもあります。ただ、ここの表記はやっぱり G7(♭9) が適当でしょう。7 小節目のコードは Dm7 です。9 小節目は C です。となると 8小節目に入るのは大定番の G7 になりいます。Dm7 – G7 – C の II-V-I。
この G7 を Dm7/G – G7(♭9) に変えておしゃれにしています。 Dm7/G は Root の G音が Dm7 の Chord Tone ではないので コードの機能としては Dominant になります。Chord Tone でない音が Root になると普通その Root になった音のコードになります。この場合、G音は C Major Scale では G7 の Root になるのでコードの機能は Dominant。但し、Leading Tone (導音) の B音がないので Neutral Dominant と呼ばれます。
もう一つ。G7(♭9)。Major Scale では Natural 9th も ♭9th も使えますが、ここでは ♭9th を使っています。結構♭9th を使う場合が多いのではと思います。「18.11 Tension Resolve」で書きましたが、9th も ♭9th も 5th に進んで解決する (Resolve) 基本的な原則があります。5th に解決するのに 9th からの全音下行で解決するよりも半音下行で解決する♭9th の方が解決感が強いんだと思います。
③ 16小節目の F♯m7(♭5) です。このコードって見た感じが面倒臭そうで抵抗感強いですよね。ただ、これ変なコードではなく、普通にクラシックの和声学でも出てきます。G7 という 7th Chord に進む P5 上の D7。Dominant 7th に向かう Dominant 7th なので Doppeldominante (Double Dominant)。D7(9) の Root 省略形が F♯m7(♭5)。
ヘンテコな記号です。V が重なっていますが、上の小さな V は 5度を表し、下の大きな V は更にその 5度を表します。斜め線は Root 省略形。9は 9th 含むコードで、1は 一番下が第3音だと示しています。
和声学ではこの D7 は G7 のような Dominant Chord にしか進めません。一方 Pops では F♯m7(♭5) は Dominant 7th にも進みますが、結構多いのは Fm6 とか FM7 に進むパターンだと思います。となると F♯m7(♭5) は Dopperdominant とは別物かと思うんですが、ここが私はよくわかってはいません。
上の譜面の場合は Dm7/G – F♯m7(♭5) – FM7 と進みます。Dm7/G の Root の G音から半音下がって F♯m7(♭5) に進み、更に半音下がって FM7 と進みます。
④ E♭音です。♭が付いています。同じように 19・21小節目にも♭が付いた音符がありますが、これは Approach Note、和声学では刺繍音といい、この小節に当てるコードを考えるときには無視できる音です。すべて 3拍目の裏に入っているので弱拍。音価も短いので、このコードを当てたら E♭と半音でぶつかってしまうとか考える必要はありません。
⑤ G7/F の F音は G7 の Chord Tone です。FM7 が 2小節続くので、G7/F を挟むことで退屈感を避けています。
⑥ この F♯ って何だと思います?
これ単に Root 以外の上 3音が半音 (Chromatic) で上がって行っているだけです。この音のつなぎは「18.7 Chromatic Approach」で書いた正に G に進む Chromatic Approach です。
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