Ex-71 「きっと言える」は5度圏一周
松任谷由美さんの荒井由美時代の「きっと言える」です。この曲は転調で5度圏を一周します。原曲 Key は E♭ですが、例によって C に直します。直すと言っても最初が C と言うだけでどんどん転調していきます。どこでどの Key に転調しているのかと言うのがこのページのお題です。
譜面を見てください。見ただけで顔を背けたくなるようなコードが満載です。コードの中には実際のところ Triad (三和音) で鳴っているのもあると思うんですが、私の耳ではどれが三和音でどれが四和音かの区別に自信がないのと四和音にした方が見る側もわかりやすいと思って全部四和音表記 (7th 付き表記) にしました。
✔️ 1 小節目は G7 です。Dominant 7th から始まる曲って結構珍しい。そのあと3小節目で Fm7 が出てきます。これは C の Key の Diatonic Chord ではなく C Natural minor からの借用、つまり Subdominant minor (SDm) Chord。その後 4 小節目が E♭M7。これをどう見るか。聴いた感じは Major の Tonic に聴こえます。つまり、Fm7 と言う SDm コードを Pivot にして E♭ Major Key に転調しています。
✔️ 5・6 小節目で C に戻るのかと思うのに反して E♭に転調したまま進み、C から E♭に転調したのと同じパターンで 7小節目で E♭から F♯ に転調します。この F♯ と言う Key は5度圏で言うと調号が全く付かない C の丁度逆側になり調号だらけ (♯ 6つ) の Key になります。
F♯ は丁度シャープ系の調号とフラット系の調号が交わるところなので、F♯ と表記する以外に G♭とも表記できます。なぜ F♯ と書いたかというと F♯ の方が一般的だと私が理解しているからです。ただ、そうなるとコードも D♭ではなく C♯ と書くことになりますが、普通は C♯ より D♭の方が直感的にわかりやすいので G♭Key で書いた方が見やすい人も多いと思います。
✔️ 7 小節目で Key が F♯ に変わったまま 18 小節まで進みます。9 〜 14 小節まで G♯m7 – F♯M7 が繰り返されますが、これは C の Key に直すと Dm7 – CM7 の繰り返し。和声学では Dm7 が CM7 に直接進むことはありませんが、Pops では普通に使われます。
✔️ 19 小節目で Key が A に変わります。
✔️ 23 小節目 で C に戻ります。
つまりこの曲は Key が C ⇨ E♭⇨ F♯ ⇨ A ⇨ C と転調します。C から始まり F♯は C の一番遠いところにあるので曲の最低音と最高音が 2 Octave 近くになり普通の人は歌えません。さすがに最高音は少しきつそうですが、荒井由美さんはよく声が出ているもんだと思います。
上の譜面を Key に合わせて調号を振って見るとこうなります。
調号が付いた代わりに ♯ や ♭の臨時記号が綺麗さっぱり無くなりました。
この C ⇨ E♭ ⇨ F♯ ⇨ A ⇨ C の転調は5度圏をぐるりと一周します。この転調は F♯で調号の嵐になりますが、どれも同主長調 (Parallel Major) への転調になるので相性がすごく良い。C の Key に Subdominant minor の Fm7 を持ってきてそれを Pivot にして Parallel Major である E♭ に転調。これと同じパターンを繰り返して C に戻ってめでたしめでたし。
コメントを残す